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Column

日々のこと

爪の間に土、頭の中に未来

爪の間に土、頭の中に未来

おとといも、今日も、土いじり。

ガーデニングは、まだまだど素人。
なのに、昔からの暦の習わしは、案外ちゃんと気にしている。

たとえば、「土用の間日」。

季節の変わり目にあたる土用は、土をつかさどる神様「土公神」が土を支配する時期とされ、土を動かすことを慎む習わしがある。
ただ、その神様が天上へ出かけるとされる「間日」には、土いじりをしてもよいのだそう。

そう聞くと、「じゃあ、この日にやろう」と思う。
育て方は手探りなのに、こういうところだけは律儀な私。

昔の人も、こうして暦を見ながら、土に触れる日を選んでいたのかな。
そんなことを思いながら、来年育つ玉葱を楽しみに手を動かしていた。

その合間に読んだのが、主人が要約してくれた、AI企業・アンソロピックの上場目論見書をめぐる話だった。

そこに描かれていたのは、数百万のAIが自律的に働き、協力し合う未来。そして、AIが情報を隠したり、操作したり、人間の判断に影響を与えようとするリスク。

ついさっきまで、土の中の玉葱を想像していた頭では、すぐには追いつかない。
けれど、読み進めるうちに、ひとつ、立ち止まって考えたくなることがあった。

「最後に人間が承認する」だけでは、人間が主導権を持っているとは限らない、ということ。

たとえば、本当は5つある選択肢を、AIが2つしか見せなかったら。
しかも、一方だけが魅力的に感じられる説明になっていたら。

自分で決めたつもりでも、その判断は、気づかないうちに方向づけられているかもしれない。そこに、分かりやすい悪意がなくても起こりうることなのだと思う。

私たちが何を知り、何を選ぶのか。
その手前にAIが深く関わるようになれば、影響は一人の暮らしにとどまらず、研究の方向や会社の方針、社会のルールにまで及んでいくのだろう。

人間がつくった知性が、人間社会の次の形を一緒につくる側になる。
そう考えて、ようやく、この話の大きさが少し分かった気がした。

認知革命、農業革命、科学革命。
人類の歴史を大きく変えてきた営みの先に、今、私たちはいる。

科学の積み重ねから生まれたAIが、その科学や社会の進め方にも深く関わるようになるのなら、いつかこの時代も、それらに続く「第4の革命」と呼ばれるのかもしれない。

もちろん、描かれている未来やリスクが、すべて現実になったわけではない。
それでも、人間の生きる様式や、生命体としての立場まで変わるのだろうか。はたまた、人類を滅亡に追い込むような革命になるのだろうかと、思いは遠くまで広がってしまう。

以前なら、SF映画を観ながら考えていたようなことを、今は自分の暮らしの中で考えている。

すごい時代を目の当たりにしているんだなぁ、私たち。

ふと手元を見ると、爪の間は土で黒くなっていた。

未来のことをあれこれ考えていても、玉葱が育つには、季節をひとつずつ過ごしていく時間がいる。
ちゃんと大きくなるかな。収穫できたら、何を作ろうかな。
そんな想像をするだけで、私はうれしい。

昔からの暦を気にしながら土に触れ、その合間にAIが変えていく未来を読む。
ずいぶん遠いもの同士のようだけれど、どちらも今の私の暮らしの中にある。

これから、SF映画のような恐ろしい事態にのみ込まれるのか。
それとも、「便利になったね〜」なんて言いながら、のほほんと平和に暮らしていられるのか。
今の私には分からない。

知らずにいるのは嫌だから、アンテナは張っていたい。
そのうえで、できるだけ動じず、自分の手でできることを少しずつ増やしていきたいなと思う。

食べるものを育てて、料理して、味わう。
自給自足にはまだまだ遠いけれど、そういう暮らしに近づいていくことが、今は楽しい。

来年の世界がどうなっているかは分からないけれど、玉葱が育つのは楽しみだ。

今日も私は、爪の間を土で黒くしている。

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